信託について


1 信託とは

信託という言葉をご存じでしょうか。言葉を聞いたことのある方は結構いらっしゃると思います。でもこの信託という新しい制度の中身、利用方法など詳しいことを知っている方は少ないと思います。簡単に言いますと信託というのは財産の所有者が一定の目的にために、その財産を他の人に預けて、その財産の管理、運用、処分を任せるというものです。その財産の所有者つまり自分の財産を預ける人を委託者、預かる人を受託者、この信託により利益を受ける人を受益者と言います。委託者と受益者は通常は同一人物です。つまり信託というのは普通は自分のために行うものです(自益信託といいます)。この三者以外にも信託にかかわる人は色々といます。そのうち重要なのは受益者代理人といまして、まさに受益者の代理人として受益者の利益を守る人です。

信託がされますとその財産の所有権などは、受託者に移ります。例えば不動産の場合登記名義を委託者から受託者に移転することが必要になります。

2 信託の利用

信託をどのような場合に利用するかですが、家族信託という言葉をお聞きになったことがあると思います。まさに財産の所有者が自分を含めた家族のために利用するものです。大きく分けると福祉型家族信託と家産承継型家族信託があります。無論、この二つのタイプの混合型もあります。

福祉型家族信託というのは、高齢者が認知症なる前に自分や奥さんなどの生活の安定を図るために財産の管理等を任せるものです。自分の障害のある子どものために行うこともあります(特に自分の死後もことを考えて)。

家産承継型家族信託というのは、自分が築いて又は代々承継してきた財産を自分子孫にうまく残していきたいという場合の信託です。委託者が再婚していて、再婚後の配偶者の生前はその配偶者に自宅を居住させたいがその配偶者の死後は自分の最初の配偶者の子に承継させたいというような場合です(最近の民法改正(令和2年7月1日施行)に配偶者居住権が新設されたのでこれにより対処が可能な場合も出てきましたが)。

 この家産承継に場合、遺言では遺言者の直後の者に対してしか、財産移転をすることはできませんが、信託では、その後の者にも財産の承継はなしえます。

3 信託をもっと考えてほしい。

信託は必ずしも財産の額が多い方だけのための制度ではありません。任意後見と組み合わせて、任意後見を補完するという役目を果たすこともあります。成年後見に代わるものとして使うことも考えられます。

まだまだ信託の利用方法はあります。今後も書いていきますが、信託にご興味をいただけましたでしょうか。

(2021年3月28日記)